酒の提供夜10時まで 「従うけど、効果ないのでは」:朝日新聞
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新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、千葉県が「お酒の提供は午後10時まで」とした自粛要請期間が2日から県西部で始まる。対象は市川、浦安、習志野、八千代、鎌ケ谷、船橋、柏、野田、松戸、流山、我孫子11市の約1万8千店。忘年会シーズンと重なり、飲食店経営者らは「事情はわかるが影響は計り知れない」と、やりきれない思いを口にした。 ◇
南北約150メートルの通りに76店が軒を並べる松戸市の「高砂通り商店会」。松戸駅西口で60年以上の歴史を持ち、お酒好きが集まる通りだが、コロナ禍以降は人通りが減った。 「自粛要請には従いますよ。でもGo To トラベルとか全体の動きを止めないで、飲食店だけに要請しても効果はないのでは」
午後5時の開店間もなく満席になる事も多かった、もつ焼き店「かがやす」社長の山口泰央さん(35)は、県の要請に首を傾(かし)げる。忘年会の予約は週末を中心に30日まで入っているが、予約人数を減らす連絡が入ってきているという。
コロナ禍で4月から約1カ月半、店を閉め、再開後も閉店時間を午後10時に短縮。11月に午前零時の通常に戻した矢先の要請で「ちょっとずつ客足が戻ってきたと思ったら、これですから」とあきらめ口調だ。 県の自粛要請期間は2~22日。森田健作知事は「22日以降は(忘年会で)店も稼ぎたい時」とするが、「感染者が爆発的に増えたら別」とも語り、自粛が22日で終わるかは不透明だ。
柏市の柏駅西口にある居酒屋「焼とりつかさ」の長(おさ)一江(かずえ)社長(49)も、県の自粛要請に対し、「中途半端な印象だ。分かりづらい」と不満を口にした。「酒でもソフトドリンクでも人が集まっていることがだめならば、(お酒の提供自粛でなく)営業時間短縮を要請すればいい」
4月時点の店の売り上げは前年同月比約80%減まで落ち込んだが、10月には同約10%減にまで回復。だが、市内の感染者が増え始めた11月、主な客層のサラリーマンの姿が減った。忘年会シーズンは例年、11月末に週末の予約が埋まってきたが、今年は大人数の予約はゼロ。「大勢での会食は会社に届けなければいけない」らしいことが影響していると、長さんはみる。
通常、夏だけの屋外席を「飲食代10%引き」とアピールするなど、年末も客の呼び込みに懸命だ。だが、「もし店でクラスター(感染者集団)が発生したら、半月は店を閉めなければならないし、風評被害も心配」。悩みはつきない。 ◇ 2次会や3次会の場となってきたスナックにも影響は大きそうだ。
船橋市内でスナックを営む小幡恭平さん(67)によると、スナックの利用客は他の店で一杯飲んでから来店する人がほとんど。客が来店するのは午後8時ごろからで、「勝負は夜9時から午前0時の3時間。その時間のほとんどでお酒を出せないのは本当に痛い」と嘆く。
県は、休業要請を出した4~5月、飲食店などに支援金を出したが、今回は「営業短縮の要請ではない」(森田知事)として支援金は今のところ考えていない。小幡さんは「前回はうちを含めて多くの店が従ったが、今回は補償がないと自粛要請に従わない店が多いのでは。家賃や従業員の給料も払わねばならず、廃業する店も増えるのではないか」と心配する。自身の店については「うちは一応従う。ただ、補償がなければ続けるかどうかは……」と表情を曇らせた。
今回の自粛要請の対象は県西部11市で、千葉市などは要請対象の地域から外れた。市境に近い飲食店で明暗がわかれた形だ。 「なぜすぐそこの千葉市はよくて、八千代市はだめなのか」。京成八千代台駅近くの居酒屋の40代男性店主は疑問を口にした。店から千葉市花見川区まで数百メートル。「感染者は千葉市内の方が多い。矛盾している。何かおかしい」
売り上げを考えれば、酒の提供を続けたいが、周りの目や評判も気になる。今回の要請に従うかは「2日の営業時間ぎりぎりまで悩んで決めます」。夜遅くまで飲んでいるお客さんは少ないといい「(自粛しても)なんとかなるかな」と力なく笑った。